記事作成日: 2015.10.04/記事更新日: 2016.01.02
木古内付近を走るEH500形牽引の貨物列車 |
青函トンネルは新幹線を前提に作られた
青函トンネルは建設の段階から新幹線が走れるようにされていました。1988年に開業してから25年以上新幹線は走ることがなく、特急電車や貨物列車が運行されていました。北海道新幹線開業にあたり、当初の予定通り新幹線が運行することになったわけですが、一つ大きな問題が生まれました。旅客は全て新幹線に移行するとしても、25年に渡り北海道の物流を支えてきた貨物列車を廃止することは出来ません。
そこで青函トンネルを含む一部区間を、貨物列車と新幹線の両方が走る共用走行区間とすることにしました。しかし、それはそれでまた別の問題が発生してしまいました。この記事ではどういった工事が行われ、どのような問題が発生したかを紹介します。次回の記事北海道新幹線青函トンネル問題を整理する その2ではどのような解決法が検討されているか紹介します。
北海道新幹線のためにどんな工事が行われたか
北海道新幹線開業にあたり、青函トンネルを含む共用走行区間「新中小国信号場~青函トンネル~湯の里知内信号所」間で大きく分けて4種類の工事が行われました。
・新幹線と在来線の共用を可能にする三線軌条化
・新幹線と在来線の中心位置がずれることによる架線の偏移の調整
・新幹線と同じ電圧25kvへの電圧変更
・古くなったATCの更新及びそれに関するケーブル敷設
これが主なところとなっています。それでは一つづつ解説します。
三線軌条化
北海道新幹線の三線軌条 急行「はまなす」より撮影 |
在来線と新幹線では線路の幅が違い、新幹線より在来線のほうが狭くなっています。貨物列車は九州から北海道まで走る列車もあり、在来線に合うような一般的な規格で作られています。そこで問題解決のために、線路を一本だけ共有して3本にします。こうすることで新幹線と在来線が同じ区間を走れるようになります。この方法はミニ新幹線や一部私鉄線で実績のある方法ですが、高速走行予定の新幹線区間では初めての採用です。
架線偏移の調整
三線軌条の写真を見ていただくと分かりますが、三線軌条区間では在来線と新幹線では車両の中心が異なってしまいます。通常電車の架線は、線路の中心にくるよう張ればいいのですが、三線軌条区間では新幹線線路の中心と在来線線路の中心の間にする必要があり、その調整が行われました。2500kV化
元々共用区間の電圧は東北地区のJR在来線で一般的な、交流20000Vでした。しかし、新幹線は交流25000Vで電圧が異なります。そのため共用区間の電圧を新幹線と同じ電圧へ変更し、貨物列車を牽引する電気機関車を交流20000Vと交流25000Vで走れるようにして対応しました。
ATCなどの信号設備更新
列車制御システムは青函トンネル建設時に整備新幹線計画へ含まれるようになった時に、ATCを採用することが決定し新幹線用ATCに準ずるシステムで構築しました。しかし、現在の新幹線は青函トンネル建設時より新しいATC、デジタルATCになったため、青函トンネル内のATCも更新することになりました。新幹線と在来線が共用するとどんな問題が起きるか
・新幹線と貨物列車双方にダイヤ上の制約が生まれる
・すれ違い時の安全確保
・コンテナの飛散対策
・コンテナの飛散対策
ダイヤ上の制約
貨物列車は設計上100キロを上回る程度までしか速度を出せません。青函トンネルを走る貨物は、南は福岡からと様々な場所を基点に走るので100キロ以上出せる専用車両を融通するのは現実的ではありません。そして新幹線は本来200km/hを超えて走るよう設計されているので、貨物にあわせて走るということは大きな無駄が生じます。
すれ違い時の安全確保
次にすれ違い時の問題ですが、コンテナ車はトンネルを相対速度200km/hですれ違うことは想定していても、300km/hなどは想定していません。想定以上の速度ですれ違えばコンテナが吹き飛ぶなど何が起こるか分かりません。重い荷物をつんでいる時は対策のしようもあるかもしれませんが、軽い荷物であったり空のコンテナである場合もあり、対策を余計に難しくしています。
コンテナの飛散対策
何らかの理由で貨物が脱線したりして、積載物の飛散が起こった場合新幹線に衝突してしまいます。その対策も必要とされています。それでは次回の北海道新幹線青函トンネル問題を整理する その2でどのように緩和・回避するかを書いてみたいと思います。
余談なのですが、現在厳密な意味での新幹線との線路共用が行われているの区間はありません。秋田新幹線の一部区間は三線軌条化さていますが、在来線扱いなので新幹線との線路共用ではありません。この区間は旅客列車のみとの共用ですが過去には山形新幹線にあった三線軌条区間では貨物列車との共用があったと思うので、青函トンネルと似た状況の路線が存在したことがあります。
青函トンネルは安全上火気厳禁なので可燃物を積載した車両は原則として通行できません。そのため貨物列車もコンテナ主体で可燃物を積載しないものとなっています。ただし、厳密には自動消化機能を搭載した電源車、青函トンネル内のみ電源OFFとなる発電機付き冷蔵コンテナなどの例外があります。
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