2017年2月28日火曜日

新技術の操舵台車でカーブ攻略 日比谷線新型車両仕様紹介




2015年6月17日に東京地下鉄(東京メトロ)と東武鉄道は日比谷線向け新型車両の仕様について発表を行いました。その新型車両の東武70000系と東京メトロ13000系の技術面について解説します。
記事作成日: 2015.06.17/記事更新日: 2017.02.28

北千住駅に到着する東武20000系
東京メトロ03系と共に置き換え予定の東武20000系

大幅な仕様統一へ

東武鉄道と東京メトロは日比谷線を現行の18メートル車8両編成から20メートル車7両編成へ変更するにあたり、新型車両を投入すると発表していました。今回は新型車両の仕様について発表しました。

今回投入されるのは東京メトロ13000系と東武鉄道70000系です。現在行っているドア位置など最低限の2社間の仕様共通化から大きく進め、車内設備から台車などの足回りまでと、大幅な共通化が行われます。製造メーカーも今回統一されることとなり、近畿車輛が両社の車両の製造を行います。

ただし、外観のデザインに関してはそれぞれ違ったデザインとなっています。車両導入時期は2016年から2019年の予定です。

車内設備の改良点

・冷房能力強化
・座席の幅を拡大
・荷棚の高さをやや低く
・座席横の仕切りを拡大
・ドア上全てに液晶3画面
・全車両端の席を優先席へ
・全車両にフリースペース設置
・連結面や座席横の仕切りを透明な強化ガラスへ


乗り心向上のため座席幅の拡大やクッションの変更などが行われます。車内の仕切りの大型化や強化ガラスを使ったデザインとありますが、イメージ画像を見る限り東京メトロ1000系のデザインを小改良したもののようです。

ドア上には多言語での案内や多くの情報を提供できるように、17インチのワイド液晶3画面がドア上全てに設置されます。近年は車内案内用液晶のワイド化が進んでいますが、液晶3画面を並べるのは初だと思います。

東武70000系側面のピクトグラム
ピクトグラムが高い位置へ
車椅子スペースは現在2箇所ほどですが、大型荷物や車椅子・ベビーカー用にフリースペースが全車両に1箇所設置されます。さらに車両端は全て優先席となります。優先席の位置統一は、乗り入れ列車によってまちまちの状況が改善される反面、端っこ好きにはちょっと辛い仕様統一です。また、ホームドア設置を見越してだと思いますが、フリースペース設置位置の表記は、高い場所になっています。Wi-Fiも導入されましたが、当面は外国人向けのものとなっています。

カーブ攻略で新技術を投入

13000系と70000系には、東京メトロ・東武の両社にとって初の技術などが盛り込まれています。

操舵台車

東京メトロ1000形用操舵台車の小型模型
東京メトロ1000形用操舵台車の小型模型
矢印の部分がリンク機構
日比谷線は急なカーブが多く、今まではそのために普通の車両より短い18メートルの車体を使用してきました。20メートルの車両に変更するにあたり、急カーブを克服するための新技術が採用されています。それは操舵台車とオール0.5Mです。

通常の台車は2本ある車軸が平行に固定されてるのに対し、操舵台車はカーブを曲がるときに台車が可動することで、車軸の向きを変えることが出来ます。これによりカーブを滑らかに通過できるだけでなく、騒音や振動なども抑えることができます。写真の矢印の部分がリンク機構によりカーブにさしかかると、2軸あるうちの片側1軸分車輪の向きが自然と変わります。

高速走行を行う特急列車やリニアモーターカーでは日本でも採用例がありましたが、通勤列車には東京メトロ1000形で初めて採用されたました。今回導入されるのは1000形用をベースに狭軌向けにしたもので、狭軌を走る一般的な通勤電車では初めての採用となります。

0.5M

この0.5Mは操舵台車同様に1000形で初めて採用されたもので、東京メトロの狭軌車両・東武の車両としては初めての採用となります。

東武70000系用台車SC107 (TRS-17M)
新型台車SC107 (TRS-17M)
一般的な電車は各車軸にモータが付いているモーター車と、各車軸に一つもモーターが付いてないトレーラー車があります。今回は台車の片側の車輪が可動するという構造を採用したため、通常なら1両あたり4つのモーターを載せられるところに、2つしか載せることが出来ません。さらに上下の激しい地下鉄を走行するため、通常よりもパワーが求められるます。そこで、全車両のうち全ての台車の片側にモーターを載せることで1両あたり0.5M、編成全体で見ると実質5M5T相当とすることで解決しました。全ての台車が同じ仕様のため、車輛すべてが同じ形式の台車を使用しています。

0.5M車はJR西日本でも採用していますが、編成を調整しやすくするためなど別の意図で採用されたため、1両あたり片側の台車に2つのモーターを装備する配置となっています。

東武鉄道70000系 SC107(TRS-17M)台車のブレーキ部
ディスクブレーキ
ブレーキは一台車に二種類装備されています。路面ブレーキが片側の車輪に一つ、モーターが装着されていない側の車軸にディスクブレーキが装備されています。このディスクブレーキには特徴があり、わざとがたつきがあるように取り付けられています。このモーターがついていない側が稼働する車輪なので、カーブ走行時は台車の枠に対し車軸が斜めになります。そこで通常車軸に対してきっちり垂直に撮りけられるディスクに遊びを作り、車軸に対してある程度斜めになっても平気にするようにすることで、ディスクに力がかかり過ぎないようになっています。

PMSM

消費電力削減のため出力205kWのPMSM(永久磁石同期モーター)を採用しました。これにより東武20050系や東京メトロ03系と比較すると、25%の駆動系消費電力の削減を見込んでいます。東京メトロでは千代田線16000系や銀座線1000系で採用されていますが、東武鉄道では30000系に試験的に1両が組み込まれているのみでした。70000系で東武鉄道の通勤車としては、初の本格採用となります。

東武70000系のVVVFインバーター
東武70000系のVVVFインバーター
PMSMと言えば東芝製の電装部品で固めるという状況がしばらくありましたが、VVVFインバーターは三菱製が採用されています。

ATO

ホームドア設置完了後の自動運転を見越してATOの準備工事が行われています。東武の本線系統の車両では、70000系が初のATO搭載車になる見込みです。

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2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

PSMSでなく、PMSM(Permanent Magnet Synchronous Motor)ですよ。

ttmjrm さんのコメント...

ご指摘有難うございます。誤字は修正しました。

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