SiCを採用する 東京メトロ1000系 |
そもそもSiCとは?
鉄道など大きな電力を使う機械では、電圧などを制御するパワー半導体が使われています。そのパワー半導体の原料といえばシリコン(ケイ素)ですが、長年の改良により性能アップの限界を迎えています。そこでSiC(炭化ケイ素)という化合物が、シリコンに代わる素材として注目を集めています。
SiCを使うメリット
・オン抵抗が小さい
・耐熱性が高い
・高速な動作が出来る
一般的なシリコンを使った半導体と比べると、「通電時の抵抗が小さい」「耐熱性が高い」「より高速な動作が出来る」というメリットがあります。これらの特製により高効率な電力変換ができ、発熱が減ることや耐熱性高いことから、冷却システムの小型化が可能になります。
SiCのデメリット
・歩留まりが悪い
・劣化が早い
鉄道など信頼性の求められるものへ使用できるようになってきてはいますが、SiCには製造時の技術的課題が残されています。歩留まりが悪いという言葉は聴きなれないかもしれませんが、要は製造時の不良率が高いということです。さらに、製造時に上手く作れるかが長期使用時のSiCの劣化の鍵を握っていて、現状はまだ完全に製造技術が確立されてるとは言いづらく、シリコンよりも信頼性は低いのです。
しかし、これはデメリットでありますが、メリットでもあります。長年の改善で改善の余地が少なくなってきているシリコンと比べれば、改良の余地が多く残されていると言えるからです。
広がる鉄道での利用
実用化の始まった通勤電車
鉄道の場合ではモーターを制御するVVVFや車内電源用のSIVなどのインバーターにパワー半導体が使われています。SiCを使ったインバーターと高効率のモーターに変更した東京メトロ01系の場合では、従来のシステムと比べると営業運転中の消費電力を38.6%削減できたと三菱電機は発表しています。
このような大きな消費電力削減などを見込んで、新型車両の東京メトロ1000系で採用されたほか、車両更新用としても小田急1000形で採用が始まっています。
新幹線の軽量化にも大きな恩恵
SiCは新幹線の軽量化と消費電力も実現しそうです。JR東海が行った実用化に向けた試験によると、N700系のインバーターにSiCを採用し変圧器やモーターも見直しを行ったところ、編成あたり10トンの重量を削減できたと発表しました。このうち7トンがインバータの軽量化によるもので、SiC使用でインバーターの冷却装置を小型化できたことが一番重量削減に役立っています。
これにより機器配置や設計の自由度の向上や消費電力の削減を見込めるとも発表しています。まだ正式に採用されてはいませんが技術的には実用化の目処がついたとのことで、近いうちにSiCを使用した新幹線が走ることになると思います。
次世代の酸化ガリウムも動き出す
SiCの次を見据えた動きも出ていて、それは酸化ガリウムという素材を使った半導体です。簡単に言えばSiCをもっと高性能にしたものを目指して研究されているものです。
日本では情報通信研究機構(NICT)を中心に2020年の実用化を目指していますが、SiCもまだまだ伸びる余地があるものなので、競い合いつつ延びていくと予想されています。
あとがき
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