2017年12月3日日曜日

鉄道技術展2017に行ってきた「山手線の新技術・足元を支える台車技術」編




2年に一度行われる鉄道技術展に行ってきたので、テーマごとに紹介します。今回は「山手線の新技術・足元を支える台車技術」編です。次回は「広がる無線無線信号システム・ディーゼルエレクトリックの波」編をです。
記事作成日: 2017.12.01/記事更新日: 2017.12.03

鉄道技術展2017ロゴ

鉄道技術展とは?

鉄道技術展は2年に一度千葉県幕張メッセで行われる鉄道関係の見本一です。2017年は11月29日~12月1日の3日間の開催です。

三菱電気などの誰もが知ってる企業から、鉄道ファンでも知っている人が少ないような小さな企業まで、様々な企業が出展しています。

展示会内部の写真は公開することが出来ないので、普段撮った写真で捕捉していきます。

山手線の新技術


軽量化・耐雪製アップパンタグラフ
工進精工所

電車は電気を取り取り入れるパンタグラフを搭載していますが、この装置を製造しているのが工進精工所です。JR東日本・西日本の通勤車などから、新幹線のパンタグラフまでも手掛けています。

山手線E235系パンタグラフ
山手線E235系パンタグラフ
山手線に配備されているE235系では、新型パンタグラフが採用されています。このパンタグラフも作っています。実機も展示されていました。

209系のパンタグラフ
209系のパンタグラフ
くの字部分の枠は四角い
E235系で採用されているのはPS33系列のPS33Hです。軽量化を行い従来より軽いものとなっています。そしてパンタグラフの枠組部分がパイプ化され丸くなっています。この形状変更により雪が積もりにくくなっている他、材質も熱伝導の高いアルミのためすぐ解けるようになっています。

また、折りたたみ時の高さも従来より低くなっています。鉄道には車体限界と呼ばれる大きさの基準がありますが、折りたたみ時のパンタグラフが低くなった分で、更に車体の高さを高く取ることができます。これによりわずかですが、天井を高くしたりできるのです。

どれと比べて軽量で折りたたみ高さが低いかを聞き忘れてしまったので、調べようとしましたが、パンタグラフの細かい仕様が公開されていないので、その辺りの詳細はちょっと分かりませんでした。

また、枠組みについてですが、私鉄では錆びにくさを優先してステンレスを採用、JRは重さや電気抵抗を優先してアルミを採用する傾向にあります。なので、アルミ自体を採用している点については、珍しくないようです。

PS33系列はE231系に採用され、E235系に至るまでに小改良が加えられています。その点を考慮して見比べると、面白いかもしれません。

新幹線並みの検査装置
日立ハイテクファインシステムズ

以前は線路の検査は専用の車両を使って行ったりしていましたが、最近ではお客さんの乗っている営業車両にも取り付け、常に状態を計測して早期に異常を発見する流れになっています。

E235系にも様々な検査装置が搭載されていますが、その中の一つの軌道検測装置を納入しているのが日立ハイテクファインシステムズです。

このシステムは車体下部に取り付けたレーザーで線路の状態を測り、以前はドクターイエローやEast-iなどの、検測専用の車両にだけ取り付けられていました。検査できる項目は「上下・左右・ねじれ・レールの幅」と、線路の4つの状態です。営業列車に搭載されているものも、従来の検査車両に搭載されているもの並みの精度で、非常に高性能なものです。

検測車両はハイテク機器の塊です。そのため中小私鉄では持つことが難しいのが現状です。そこでJRでは営業列車にまで搭載されるようになった検測装置を、中小私鉄向けではどう考えているか質問してみましたが、いまだ高価な機器には変わりないのでまだ難しいとのことでした。

足元を支える台車技術


プレス加工で軽量化
日本車両

鉄道車両製造大手の日本車両のブースでは、小田急ロマンスカー70000形で採用された新型台車が展示されていました。

この台車の特徴は台車枠と車輪を繋ぐ、軸箱部分にあります。基本構造は小田急ロマンスカー(MSE)60000形で採用されている、タンデム式軸箱支持装置です。違うのは一般的に
別々に作られ、後から溶接されていた台車枠と軸箱がプレス加工で、一体化している部分です。

209系500番台の台車
209系500番台の台車
丸の部分がプレス加工になっている
これによりひび割れの発生しやすい溶接部が無くなり、ひび割れの検査が不要になっています。また、軸箱は強い力のかかる部分なので鋳造部品で重いものでしたが、その部分でも一定の軽量化を実現しました。

アナログでカーブを曲がる

新日鉄住金

新日鉄住金は様々な台車を製造していますが、仙台市営地下鉄2000系向けの操舵台車が展示されていました。操舵台車は本来台枠に対して垂直になっている車輪の車軸を、カーブ時には曲げる技術です。これによりカーブを滑らかに通過することが出来ます。

東武鉄道70000系 SC107(TRS-17M)台車
東武鉄道70000系 SC107(TRS-17M)台車
丸部分がリンク機構
操舵台車自体は以前からありましたが、新日鉄住金製の台車の特徴は簡単なリンク機構のみで実現していることです。車体と台車をつなぐリンク機構により、カーブで台車と車体が平行でなくなると、車軸を傾けるようになっています。現在では東京メトロ1000系・13000系、東武70000系などでも採用されています。

カーブで軸の向きが変わるということで、直進性に疑問を持つ方をいるかもしれませんが、その点は従来と変わらないそうです。ボルスタと台車による摩擦があるので、車両の揺れ程度ではリンク機構は作動しないそうです。また、高速走行時の安定性も変わらないとのことです。

東武鉄道70000系 SC107(TRS-17M)台車のディスクブレーキ
東武鉄道70000系 SC107(TRS-17M)台車
ディスクブレーキ
また、70000系・130000系ではブレーキ音が五月蠅いことが話題なっていますが、その点は新日鉄住金が担当していないディスクブレーキ部のほうが問題なのではないかとのことです。確かに東京メトロ1000系も、一つの台車のうち片側の車軸にモーター・もう一つの車軸にディスクブレーキで基本構造は同じなのに、それほど五月蠅くないように思います。

本来ディスクブレーキは車軸に対して垂直に取り付けられて動くことはありませんが、操舵台車ではそれではブレーキが壊れてしまうので、ディスクブレーキのキャリパー部分で対応しているそうです。なので、1000系の標準機台車を狭軌用に改良が加えられた時に発生した構造的な部分か、それ以外の材質の改良など純粋なブレーキの改良による部分が原因なのかもしれません。


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